日本に伝えることが禁じられていた制約理論
昨日の記事で触れたザ・ゴールの制約理論について書きます。
ザ・ゴールは、小説を読んだ工場長の工場のパフォーマンスが劇的に改善されるなどしたため、作者のエリヤフ・ゴールドラットが日本語訳をしばらく許さなかったといわれています。ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた、日本経済がアメリカの脅威になっていた頃の話です。
バブル崩壊後、消費税増税・財政破綻論をきっかけに日本は「失われた~年」を10年、20年と更新していきますが、ザ・ゴールの日本語版が出版されたのは失われた10年といわれる頃だったと思います。
この本を読んだときは、その理屈に衝撃を受けて何度も読み返しました。今でもふと思い出して読み返したりしますが、何度読み直しても面白いです。
ただ、社会人としてそれなりの経験を積んだ今となっては、この理論を適用するには、メンバー全員(少なくとも業務運用を指示するメンバー全員)がこの理論をきちんと理解する必要があり、それは非常に難しいことだと思っています。
常識の積み重ねが非常識な発想になる
例えば、手待ちの状態の人がいたとき、上司はどうしても何か仕事を与えなきゃと思ってしまいますし、手待ちの部下も何か仕事をしたいと思ってしまいます。評価も忙しく働いているほど高くなります。
制約理論では、手待ちの人の立場によって対応が変わってきます。もし、手待ちの人が制約リソースであれば、一刻も早く手待ち状態を解消しなければいけません。しかし、制約リソースでなければ、手待ちだったとしてもとりあえずは放置しておいても大丈夫です。
制約理論の肝である制約リソース
制約リソースとは、よく「鎖の最も弱い輪」と表現されます。鉄の鎖があるとして、その鎖がちぎれるかどうかは、たった一つの鎖の輪っかに依存しています。たった一つが弱ければ他の輪っかがどれだけ強くてもすぐちぎれてしまいます。
例えば製品を作るときに、Aは1時間に80個部品を作り、Bは40個部品を作り、Cは10個部品を作れるとして、最後にDがそれぞれ1個ずつを組み合わせて1時間に50個製品を作れるとします。このとき、制約リソースはCになります。
製品はCのせいで1時間に10個しか作れません。鎖の最も弱い輪であるCを強化して生産量を増やさない限り他をいくら増やしても意味がないわけです。
通常はもっとプロセスが複雑ですし、リソース間の生産能力もこんなにわかりやすく差があるわけではないため、全てのリソースが全力で稼動して、AやBの部品が余りまくり、Cが全く足りないという状況に陥っているのにCに注意がいかない状況に陥ることはよくあります。
この制約理論についても私の興味があるテーマの一つなので、今後も小説・小説以外にかかわらず触れていきたいと思います。