小説とは目的が異なる小説「ザ・ゴール」
エリヤフ・ゴールドラットさんが書いた「ザ・ゴール」というビジネス小説があります。発刊当時はかなり話題になりました。
私は、この小説を読んで目から鱗が落ちました。衝撃でした。ザ・ゴールには続編があり、登場人物が全く変わるシリーズがいくつかありますが、全て購入して読んでいます。
どれも惹き込まれる面白さがありますが、ザ・ゴールシリーズはそもそも面白い小説として売ろうという意図とはまた別の意図があります。
制約理論という「すべてのシステム(何かを行うときにやる一連の作業の集まり)には制約が存在し、制約がそのシステムのパフォーマンスを決定している」という前提に基づいた経営管理の手法を、読んでいる人に理解させようという意図です。
「もしドラ」もザ・ゴールと同じ類型
似たような小説として、ちょっと前に流行った「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(通称もしドラ)という本もありましたが、これも面白い小説として売るというのとはまた別の意図として、ドラッカーのマネジメントを、もしドラを読んでいる人に理解させようという意図があります。
このような小説は一般的な小説とは違う気がしますが、個人的にはむしろこのような小説が増えていくのは好ましいことなんじゃないかと思っています。まんがでわかるシリーズのような、説明のほうが比重が大きいものよりも、小説として面白く、かつ結果的に概要がわかるようなものが理想です。
ザ・ゴールに心酔した私は、あらゆる制約理論の本を見つけては買って読んでみましたが、小説形式のザ・ゴールに勝る本はありませんでした。もしドラは読みませんでしたが、この本がきっかけで改めて流行りだしたドラッカーのマネジメントは読んでみました。
制約理論のギャップは物語としても魅力的
ザ・ゴールもやはりギャップの面白さで、制約理論の世界では、例えば工場で物を作るときに、全ての機械が100%フル稼働していて、作業員も休みなく働いているとすると、その工場は非常に効率が悪いということになります。
常識ではそういう工場こそ理想だし、どの経営者も社員を遊ばせずにフル稼働している状態を目指してがんばっていると思いますが、実はそれは非常に危険だというのがこの話の面白いところです。その理由についても非常に説得力があり、私はハマりましたが、そこまで共感している同僚はおらず、改めて常識と真逆の考え方を受け入れるというのは非常に難しいことなんだと痛感した覚えがあります。
一方で、小説だとこのような常識はずれの話は物語として受け入れられやすく、その意味でも小説形式をとることで違和感なく読者が読めるのだと思います。
【関連記事】
小説としてのザ・ゴール
・ザ・ゴール第一章を分析。事件の発生から解決の僅かな希望まで
・ザ・ゴール第二章を分析。問題解決の鍵となる人物ジョナの登場
・ザ・ゴール第三章を分析。問題の共有とジョナとの対話、家族の亀裂