オムニバス形式の漫画
オムニバス形式とは一回一回で物語のオチがつき、次の回には全く違う物語が始まる形式です。
もっとも有名なオムニバス形式の漫画は最近最終回を迎え、それがニュースにもなった「こちら葛飾区亀有公園前派出所」だと思います。他にも「サザエさん」はアニメのほうが有名ですが、もともとは長谷川町子さんのオムニバス形式の漫画です。ドラえもんも同様です。
このようなオムニバス形式の漫画は短編の集まりであるがゆえに、人気が出るといつまでも続けることが可能です。毎回一旦仕切りなおしになるので、長編と違い、時代の流れにも簡単に対応でき、前回と全く関係ない話題で物語を作ることが可能です。
一方で、オムニバス形式でありながらメインプロットとも言える物語全体の流れがありつつ、各回の短編はその物語のサブプロットのような位置づけの漫画もあります。私が好きな漫画「岳」もそのようなメインプロットを持つオムニバス形式の漫画です。
オムニバス形式の漫画と短編小説の違い
オムニバス形式の漫画は登場人物や設定など共通したものがありつつ、前回と今回の話に連続性がないと言うものですが、短編小説というのは、基本的に短い小説というイメージで、同じ設定で何話も短編の物語が続いているイメージはありません。
とはいえ、オムニバス形式の小説が全く存在しないと言うわけではないようで、インターネットで検索してみると、小暮荘物語、タイニー・タイニー・ハッピー、クジラの彼、檸檬のころ、レヴォリューションNO.3といった小説がオムニバス形式の小説のようです。私自身が小説に詳しくないからかもしれませんが、あまり聞いたことがないタイトルです。
オムニバス形式の漫画が誰もが知るメジャーなものが多いのに対して、小説になると、ある程度小説に詳しい人でなければ聞いたこともないタイトルになってしまうのは、漫画と小説の娯楽としての役割の違いに起因します。
漫画は単行本1冊読むのも1時間はかかりません。小説は1冊読むとなると数時間は覚悟する必要があります。このため、漫画は一旦読み出したら、途中で挫折することはほぼありません。反面、漫画を読みきったことそのものに対する達成感みたいなものもありません。
一方で、小説は漫画と比べ読むのが大変で、途中でくじけてしまう可能性があります。反面、本を一冊読みきったという達成感が漫画と異なり大きいです。
オムニバス形式の小説は途中で切ることができますが、一冊の分量は長編小説とほぼ同じです。そうなると途中で切ったあと、再度読み始めることに対する心理的抵抗が漫画より大きい小説だと、読むのを再開するのが億劫になりやすいです。さらに、一冊を読みきったという達成感も薄くなります。
そういう意味で、小説と言うのは漫画よりも映画とよく似た性格の娯楽なんだと思います。