小説の最初の三行を読んでみる
一度同じ内容でやりましたが、小説の最初の三行を読むと言うのはすぐできるし、レトリックの勉強にもなるのでこれからもシリーズ化していきたいと思います。
今回も家にあった小説を2冊引っ張り出して、最初の3行を読んでみました。
華麗なる一族の最初の三行
一時期、白い巨塔とともにドラマで流行った山崎豊子先生の有名な作品です。司馬遼太郎先生もそうですが、なんというか絶対に真似できない調査力に裏打ちされた重厚な物語といった感じでどの作品にも迫力があります。
公認会計士としてはこの小説のモデルになった山陽特殊製鋼倒産事件も気になる話しではあります。
陽が傾き、潮が満ちはじめると、志摩半島の英虞湾に華麗なたそがれが訪れる。湾内の大小の島々が満潮に洗われ、遠く紀伊半島の稜線まで望まれる西空に、雲の厚さによって、オレンジ色の濃淡が描き出され、やがて真紅の夕日が、僅か数分の間に落ちて行く。
非常に写実的ですが、どことなく物語の行く末を暗示していそうな出だしです。なかなかこのレベルに到達するのは難しそうですが、現在いる場所・時間帯について描写するという出だしの一例ですね。
封神演義の最初の三行
こちらは中国の古典ですが、安能勉氏の翻訳による封神演義を選びました。古典なのでレトリック的なすばらしさは特にありませんが、この小説も面白くて時間を忘れて読んでしまった作品です。
初めに混沌があった。
混沌が分かれて太古が始まる。
太古は時空であり
時空は宇宙であった。
神話的な始まりですね。三行といいましたが、キリのいい句点までで4行になりました。このような世界の成り立ちから語り始めると言うのは、ファンタジー小説でも結構使えそうです。
ファンタジー小説はもともと神話のような不思議な世界観を前提としていて、かつその不思議な世界観について読み始める人はわかっていないため、ある程度先に説明する必要があります。
ちなみに封神演義は漫画も有名ですね。昔全巻もってました。