ザ・ゴール第一章を分析。事件の発生から解決の僅かな希望まで

ザ・ゴールを再び読み直す

小説は大体1回読んだらもう一度読むことはあまり無いですが、ザ・ゴールは、もうすでに3、4回は読んでいると思います。何か仕事で行き詰っている時や、抜本的な解決法を見つけたい時など、この本を読むと元気になります。

今回は特に何かに行き詰っているわけではないですが、改めて物語の構成という視点からザ・ゴールの面白さを解読したいと思います。

以前の記事で、目次の1章から8章までのそれぞれの概略は見ていったので、今回は第一章を細かく分析したいと思います。

オープニングは工場の朝

オープニングは工場の朝から始まります。物語の最初の三行を引用します。

朝七時半、会社のゲートを車でくぐると、駐車場奥の真っ赤なベンツが目に飛び込んできた。工場棟に隣接した事務所脇に停めてある。それも私専用の駐車スペースにだ。こんなことをするのはビル・ピーチ以外にいない。

僅か三行に主人公の立場や、不穏な状況が詰め込まれています。今が朝で、工場が今から稼動するということ、自分より偉い立場の人間が来ていること、自分専用の駐車場があるぐらいある程度偉い人であること等々。ザ・ゴール全般に言えることですが、物語の中にあまり無駄な部分が無い気がします。面白くて一気に読めてしまう物語はあまり冗長な部分が無く、全ての記述に何か意味があるのではないかと思ってしまうような書き方のものが多いとおもいます。

“トリックスター”ビル・ピーチ

主人公の上司であるビル・ピーチは工場を散々引っ掻き回した挙句、3ヶ月以内に工場を立て直さないと工場は閉鎖だと告げて帰っていきます。ここで、物語が動き始めます。三幕構成でいうインサイディング・インシデントです。この物語のセントラル・クエスチョンである工場を苦境から立て直すことが明確になります。

ビル・ピーチによって物語は始まり、工場が存続できるかどうかはビル・ピーチが鍵を握っています。決して根っからの悪人というわけではなく、味方につければ強力ですが、敵に回せば強敵です。

ザブプロット「家庭」の開始

メインプロットの開始直後に、サブプロットである家庭の幸せについての物語が始まります。主人公は苦境に立たされ、家庭を顧みる余裕が無くなり、家庭も静かに破綻にむけて動き始めます。

最初の障害の解決と僅かなヒント

ビル・ピーチが工場を訪れるきっかけとなった大口顧客からの注文を何とか一日で処理し出荷します。ここで、一般的には非常に非効率と思われる方法を取り、今まで何日も遅れていた出荷を一日でこなすことができました。このことが、この物語を読み始めた読者への「効率とは?」との問いかけの役割も果たしています。

ファーストターニングポイントへの準備

第一章の終わりに、胸ポケットに入っていた葉巻をきっかけに、この物語の最重要人物「ジョナ」のことを思い出します。正確には思い出したのは第二章の最初ですが、ジョナとの再会というファーストターニングポイントに向けて準備が始まります。

ビル・ピーチがいなければ物語が始まらず、ジョナがいなければこの物語はハッピーエンドになりませんでした。第一章では物語の背景を説明するとともに、これから起こる様々な出来事の仕掛けをセットしたことになります。

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