小説の最初の2、3行目第3弾。2冊のエンターテイメント小説の出だし

今回の題材は「下町ロケット」と「早雲の軍配者」

最近はなかなか小説を読む時間がなく、昔持っていた小説もあらかた処分してしまっているので、家に小説がないと思っていましたが、本棚の奥に比較的最近買って読んだ本があったのを発見して引っ張り出してみました。

下町ロケットの最初の三行

半沢直樹が一番有名ですが、数々のドラマ化された小説がある池井戸潤先生の作品です。もともと銀行でお勤めだったというのがよくわかる。銀行の様子が非常にリアルに描写されている作品ばかりだと思います。

「いよいよだな。ああ、なんだかドキドキしてきたよ」
緊迫感が漲る発射管制塔内で、同僚の三上孝が上擦った声を出した。
佃公平は、モニタ画面に表示されている射点の様子を一瞥し、画面右端に出ている風速表示を確認した。相変わらず秒速十五メートルの強い風が吹いている。

セリフ始まりですね。セリフ始まりは背後にすでに色々とあった後のシーンの途中から始まっている印象を与えます。オープニングを最初から緊張感がある状態にもっていきたいときに使われる手法です。三幕構成のオープニングもバックストーリーという形で、すでに物語がある程度進んだ後からの開始が通常のようです。エンターテイメント性が高い作品らしい始まり方だと思います。

早雲の軍配者の最初の三行

「全国の書店員から絶賛の嵐!!」という帯につられて買った小説ですが、確かに面白かったです。この小説もエンターテイメント性が高い作品だったと記憶しています。読み終わった時にまだまだ続きがありそうで、これは上巻なのかと思っていました。信玄の軍配者謙信の軍配者北条早雲といった近い時代の作品も出ているようなので、そこで話がクロスしているのかもしれません。

 

 

八月の下旬から稲を刈り始め、その作業が九月の初めまで続く。刈り入れの合間には五月に蒔いた粟も収穫する。それが終わると麦を蒔く。麦を蒔き終わる頃には七月に蒔いた蕎麦の刈り入れ時になるし、大根やカブ、小豆の収穫も待っている。これは伊豆韮山だけでなく、関東諸国ではどこでも見られる秋の農村風景であった。ひとつ違っているのは、韮山の農民は表情が明るいことであった。

4行目まで入れないと作者の意図が反映できていない気がしたので、4行入れました。今が秋の収穫時期で、韮山という舞台のところだけ農民が明るいということは、類まれな名君が領地を治めているということがわかります。おそらく北条早雲でしょう。戦国時代の話しながら最初は穏やかな感じで始まりそうです。

今回は2冊のエンターテイメント小説

今回は、エンターテイメント小説という映像や漫画などに横展開しやすそうな作品を2つ持って来ました。どちらも、出だしから絵が頭に浮かんできそうな始まり方をしていて、映画のような展開を意識しているように見受けられました。

私も文学的表現のようなセンスについては全く自信がないので、このような読者を惹き込むことに特化した小説が書けるようになれるといいなと思います。

 

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