2割のアリはサボっているという話
アリの2割はサボっているというのは結構有名な話で、そのサボっている2割のアリを取り除くと、残りの中から2割がサボりだすそうです。
サボるというのはどうしてもネガティブな表現で、この話の文脈では「いかにそのサボる割合を減らすか」といった話になりがちです。
働かないアリに意義がある
以前買ったビジネス書に、働かないアリに意義があるという本があり、非常に興味深かったので紹介します。
アリは確かに2割程度働かないアリがいて、1割程度は一生涯働かないそうです。だからダメというわけではなく、自然淘汰の結果、この割合で働かないアリがいるコロニー(アリの集団)が一番長く存続することができるということのようです。
ザ・ゴールに出てきた話との共通点
この話を思い出したのは、ザ・ゴールに関する物語の構成分析を行っていた過程で、「バランスの取れた工場に近づけば近づくほど、倒産に近づく」という話があったためです。
バランスの取れた工場というのは、言うなれば全てのアリが常に忙しく働いている状態と同じ状態です。全てのアリが常に忙しく働けば働くほど、コロニーの滅亡に近づくということです。それでは、なぜバランスの取れた工場は倒産に近づくのでしょうか。
2つの要因「統計的変動」と「従属事象」
いきなり難しい言葉が出てきましたが、統計的変動というのは、予測できないことが発生することがあるということです。そして、従属事象というのは、物事には原因と結果があり、集団で何かをやっている時には必ず前工程と後工程があるということです。
この二つの要因が重なり合って、日々の仕事なり生活なりは営まれています。
統計的変動を吸収するのが「働かないアリ」
例えば、アリの巣の上を人が通り、巣が壊れてしまったとします。いつ壊れるかは予測できません。全てのアリが忙しくしていると、巣を修復するためのアリがいません。仮にどこかから修復担当のアリを引き抜くと、本来の作業が滞ります。
一方で、働かないアリがいれば、そういった緊急事態に他に全く影響を与えることなく即座に対応することができます。
人間社会で仕事をしていても、突発的なトラブルに対応できず放置していると、そこだけでなく従属事象により連鎖的に後工程に影響が広がっていきます。ドミノが途中で失敗して途中から全く倒れていかない状況に似ています。
会社内でも暇な人はいていい
普通の会社でも、目指すべきは「できるだけ少ない時間で多くのことをこなせること」であり、「全員が忙しく仕事をしていること」ではありません。できるだけ少ない時間で多くのことをこなせるようになった結果、暇な人は増えるはずで、それによって緊急事態への対応能力が高まります。
ここで、暇そうにしているのが罪悪のような価値観があるため、何かしらやっているフリをしている人が増えると、緊急事態に誰が対応可能なのかわからなくなります。
私は、暇なら堂々と暇そうにしていられる雰囲気のほうが、かえって突発的な仕事を頼みやすくなり、アウトプットが速くなると思います。