三島由紀夫先生の「命売ります」の構成【ネタバレ注意】

教科書にも出てくる三島由紀夫先生

三島由紀夫先生といえば、昔教科書で見覚えがあります。金閣寺や潮騒の作家として国語か日本史で覚えさせられたような記憶があります。その三島由紀夫先生の文庫本が本屋に行くと平積みされており、隠れた怪作小説発見との帯があったので思わず買ってしまいました。

物語はオムニバスのような形で進む

主人公が自殺に失敗して病院にいるところから始まり、「命売ります」という広告を新聞に掲載したことで、様々な事件に巻き込まれるという話です。

ここからはネタバレになります。

個々の事件は独立しており、最後にそれぞれの話がある程度関係があったことが明かされます。読んだ印象としてはこれはもしかして自殺未遂で意識不明の間の夢オチ?と思うほど支離滅裂というか突拍子もない印象でした。秘密結社や吸血鬼が出てきたり、突然行ったこともない部屋に上がりこんで初めて会った女の人と寝たり、かなり展開が強引だと思います。

しかも、秘密結社がいったい何なのか、吸血鬼は病気か何かでそうなったのか、最後までよくわからないままです。もしかしたら主人公は気が狂って頭がおかしくなっている可能性もあります。オチで謎が解けるとかではなく、ほんとに最後までわからないまま終わってしまったのでびっくりしました。

小説を通して作者が伝えたかったことを想像する

作者がどういう意図でこの小説を書いたのかは本人に直接聴いてみないとわからないところですが、「生きるとはどういうことか」ということに対する問いかけなのかなと読んだ後に思いました。

主人公は最初、命なんていつなくなってもいいと思っていますが、途中から死にたくなくなり、最後の場面では殺される危険に晒されているのに路上に放り出されて途方にくれます。

いつ死んでもいいと思っている間は、非常にスマートな感じでかっこいい男性でしたが、途中から生にしがみつくようになり必死に追手から逃げ回り、最後は交番に駆け込んで助けを求めます。

死に対して自ら向き合い、いつ死んでもいいと思っている時は、腹が据わるかんじで怖いもの知らずになります。一方で、死に背を向け、逃げようとすると心に余裕がなくなり、怯えて生きることになります。

それは、怖いもの知らずの人がいるとか死に怯えて暮らす人がいるといったことではなく、一人の人間の中でも行ったり来たりする思いであるというようなことがいいたかったのではないかと思いました。

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