三島由紀夫先生の「命売ります」の構成【ネタバレ注意】その2

「命売ります」の構成を詳細に分析する

前回の記事で、大枠の構成について分析した「命売ります」についてより詳細な物語の構成を分析していきたいと思います。

この小説も非常に面白く、短時間で読むことができたので面白く感じた要因というのがあると思います。その部分について掘り下げられたらと思います。

この物語が普通とは違う点

この物語が普通とは違う点は、まずタイトルにもあるようにたった一つしかない売ったら死んでしまって意味がない命と言うものを売り物にしようという点です。命というのは大事にすべきものというのが普通ですが、主人公は大事にするどころか死ぬつもりで売りに出しています。

次に、主人公が最初は確固たる意志があるスマートな感じから最後は弱弱しい男になってしまう点です。普通、主人公は精神的な成長を遂げていくものだと思いますが、この物語の主人公は逆のように見えます。

三幕構成に当てはめた物語の構成

三幕構成に当てはめるとすると、命売りますの広告を出して最初の依頼が来るまでが一幕目、4つの依頼と1つの出会いがあり、最後の出会いから逃げ出すところまでが二幕目、秘密結社ACSに捕まり、逃げ出して警察に放り出されるところまでが三幕目になるかと思います。

4つの依頼はそれぞれ独立しているように見えますが、三幕目の捕まった時に関係が明らかになります。

一つ目の依頼は美女との心中

最初の依頼は、老人から美女を口説いて一緒に死んでくれという依頼です。正直、いきなり部屋を訪問してきた見知らぬ男と打ち解けてベッドインするというのが強引過ぎる気がしますが、予定通りにことが運び、上手いこと相手の男に見つかり一緒に殺されると思いきや女だけが殺されます。

二つ目の依頼は毒の実験台

二つ目の依頼は、毒の実験台です。依頼主が実験台にさせられそうになっていたのを身代わりにやると言うものですが、最後の種明かしで依頼主も実験台を探していた外国人もグルだったようです。この依頼も、毒の効果で自殺しそうになったところを依頼主が代わりに死にます。

別に依頼主は死ぬ必要なかったんじゃないのかと言う話ですが、依頼主は主人公のことが好きになっていて、不細工だったので好かれる自信がなく死んだとのことです。

この話も不思議なのは、三幕目のネタバレではACSは主人公に警察とのつながりを吐かせる目的でおびき寄せたらしいのですが、自殺に追い込んだら意味が無い気がします。

次回の記事に続きます。

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