三島由紀夫先生の「命売ります」の構成【ネタバレ注意】その3

「命売ります」の構成を分析する

前回の記事では、二幕目の途中、2つ目の依頼まで書きました。今回は3つ目の依頼から構成を分析していきたいと思います。

3つ目の依頼はミッドポイント

3つ目の依頼から少し様子が変わってきます。吸血鬼の息子から、母親に死ぬまで血を吸われる要に依頼されます。

実際、死にかけるまで血を吸われるわけですが、その間の生活は非常に穏やかな家族のような生活を送ります。主人公がいよいよ血を抜かれすぎて死ぬかもしれないと言う時に最後の散歩に出かけ、そのあと依頼主の母親は一緒に死のうと考えていましたが、散歩の途中で主人公が倒れたことで、主人公はまたもや死なずに病院に入り、依頼主の母親だけが予定通り家に火を放って死んでしまいます。

ここは物語の構成上、主人公が生きていることに興味が無い状態と、生きていることに幸せを感じる状態の境に当たる依頼、三幕構成で言えばミッドポイントだったと思います。

またこの依頼は、ACSの話とは独立しています。

4つ目の依頼はスパイの暗号解読

4つ目の依頼は初めて女性が絡まない依頼になっています。スパイが次々に返り討ちにあったため、主人公を送り込もうとします。

ところが、主人公はトリックを見抜き、全く命の危険を冒すことなく問題を解決します。

この辺りから、積極的に死のうとしていた主人公の様子が変わっていることがわかります。また、物事を複雑に考えすぎて本質がわからなくなるといった三幕目につながる示唆があります。ACSは主人公を警察の人間と勘違いして殺そうとしますが、主人公は警察とは全く関係がありません。

命の販売を休止して飯能へ

結局死ぬことなくお金を手に入れた主人公はアパートを引き払って当ても無く移動し、飯能に落ち着きます。そこで出会った良家の令嬢でちょっとおかしな女性と仲良くなり、恋人同士のような生活を送ります。

そして、女性がこっそり飲み物に毒をいれ、主人公と心中しようとしますが、主人公は毒に気付き、死を免れます。ここが三幕構成でいうセカンドターニングポイントになります。

死を明確に拒否することで、主人公自身も死に恐怖する内面に気付き始めます。そして、ここからは死の恐怖から逃れる三幕目へと展開していきます。

次回の記事に続きます。

 

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