物語のレンジについて。どのレンジを物語の中心に置くか

大河ドラマから私小説まで物語が焦点を当てるレンジについて

物語を作るにあたって、どのレンジを対象とするかという話があります。アイデアが固まったら自然とレンジも決まってくるものなのかもしれませんが、ある程度レンジを意識していないと書きたいことが上手く整理できない気がします。

レンジというのは、物語の中で設定される時間的・空間的な範囲です。大河ドラマであれば西暦○○年~○○年までの間に起こった出来事をテーマに物語を作っており、その長さは数十年、舞台は全国各地に飛んだりします。一方で私小説は、対象は作家本人。もしくは作家本人をモデルとした主人公、その内面についてが物語の中心となります。大河ドラマの物語のレンジは非常に広く、私小説の物語のレンジは非常に狭いと思います。

もちろん、どちらがいいとか悪いとかではなく、自分がどういう物語を作りたいのかを考える時に、どのレンジの物語なのかを意識することで、おのずと構成についても考えやすくなり、整理しやすくなるのではないでしょうか。

レンジが広い物語の例-風の谷のナウシカ

レンジが広い物語の例としては、風の谷のナウシカ(漫画版)があります。この物語は、ナウシカを中心に語られますが、中心となっているテーマは人類とはとか科学に潜む負の側面とか、とにかくスケールが大きいです。

物語の時間も、物語の中で流れる時間はせいぜい数年といったところでしょうが、超古代文明の技術ができたところから考えれば数百年というスパンだと思います。

レンジが広い物語は、テーマが壮大で我々の存在そのものを問うような話になりがちです。戦争ものとかも、かかわる人数が大きくなり規模が大きくなるため自然にレンジも広くなると思います。

レンジが狭い物語の例-秒速5センチメートル

レンジが狭い物語の例としては、秒速5センチメートルがあります。新海アニメの特徴として、誰もが感じる日常的なせつなさや喜び、葛藤や苦悩の延長線上にある心情の描写が物語になっているという印象があります。

秒速5センチメートルは、言うなれば一人の男の内面がテーマで、それに振り回される周りがいたり、自分自身が振り回されていたりします。時間軸的には20年ぐらいの期間かと思うので長いですが、空間的には一人の男の内面から離れることはなく、非常に狭いレンジです。

レンジごとに面白さがある

レンジの違いによって、面白さは変わりますが、それぞれに面白さがあります。例えて言うなら、宇宙に関する話も、顕微鏡で見るミクロな世界に関する話も、宇宙だから大きくて面白い、細胞組織の活動は微細だからつまらないということにはならないのと同じです。

ただ、宇宙に興味がある研究者は天文学者になりますし、細胞に興味がある研究者は生物学者になるというように、興味があるテーマは人それぞれ違います。自分がどのレンジに一番興味があるのかを理解することは、物語を飽きずに作り続けられるかどうかとも関係しているのではないでしょうか。

 

    

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です