思考プロセス。5つのツールと最大の留意点

因果の鎖を紐解く手法「思考プロセス」

ザ・ゴールで語られることは読んでみれば非常に当たり前に思えることばかりです。ザ・ゴール2に出てくる思考プロセスについても同様です。

作者は鎖にまつわる話が好きなようで、ザ・ゴールの制約理論のもっとも弱い鎖の輪の例えもそうですが、思考プロセスもあたかも因果のもっとも弱い鎖の輪を探そうとするかのような手法です。

思考プロセスにはいくつかのツールが出てきます。現状問題構造ツリー、対立解消図、未来構造ツリー、前提条件ツリー、移行ツリーといったものですが、ザ・ゴール2では現状問題構造ツリーと対立解消図が大きくクローズアップされているように思います。

問題を解決するポイントは「何が問題なのか」

思考プロセスは、現状問題構造ツリーによって、なぜ問題が発生しているのかを遡っていきます。一見たくさんの問題が発生しているように見える状況でも、さかのぼっていくとほんのわずかな要因から派生して多くの問題が発生していることが多いです。トヨタの何故を5回繰り返すというのも同じように、根本的な問題に立ち返り、その根本的な問題を解決する事で一気に複数の問題を解決しようとしています。

こうして根本的な問題を特定したら、対立解消図によって、問題の捉え方を考え直します。大抵の問題は、2つの相反するものを実現しようとした結果、あちらを立てるとこちらが立たない状況に陥り、身動きが取れなくなっています。

例えば、「あらゆる状況に対応できるように在庫を大量に抱えておくべき」という考えと「資金繰りを安定させるために在庫は極力持たないべき」という考えの対立が起こり、在庫を大量に抱えた結果、もう一方の資金繰りが危機的状況に陥るといった具合です。

対立解消図では、この対立を見える化し、そもそも実現しなければならないことを再考します。例の場合は本来、会社が存続することが第一であり、資金繰りが悪化して倒産したら在庫を大量に抱えていても全く意味がありません。

だからといって、あらゆる状況に対応できなくてもよいというわけではありません。そこで、あらゆる状況に対応しつつ、在庫を抱えない方法は本当に無いのかについて再考します。

もし、材料の調達から販売までのリードタイムを劇的に縮めることができれば、在庫を抱えずあらゆる状況に対応できるようになります。リードタイムを縮めることが本当に不可能なら在庫を資金繰りがぎりぎりの状態で抱え続けるしかありません。

ここでリードタイムを縮めることが不可能というのは思い込みなのではないか、何か方法は無いかということに気付くことができます。

現状問題構造ツリーと対立解消図が大きくクローズアップされるのは、この問題の特定と解決策の発見が問題解決の最大のポイントになるためだと思います。

未来構造ツリーはその解決策がどこまで波及効果があるかの検証、前提条件ツリー・移行ツリーは「だれが、いつ、どこで、どのように」その解決策を導入するのかについて考えるためのツリーです。

ここでも、5W1Hの要素があります。

思考プロセスを用いる上での留意点

思考プロセスは、文字通りこのツールを用いる人の頭の中のプロセスを見える化したものです。したがって、用いる人が間違った固定観念に囚われていると、思考プロセスで作成される各種ツリーや対立解消図も間違った方向に向かいます。

しかも、思考プロセスで見える化するとなんとなく因果関係に説得力があるように見えてしまいます。しかし、間違った考えであれば、因果のつながりがよく見るとおかしかったりします。

よくある間違った使い方としては、「原因は自分たち以外にある。だからどうすることもできない」という結論に説得力を持たせるという使い方です。

このツールは問題を解決するためにあります。問題を解決できない理由を補強するためにも使えますが、結果的にそれは不幸をもたらすだけに終わります。

原因を自分に持ってくることは、大変な反面、自分の運命を自分のコントロール下に置くことができるようになります。その逆に、原因を他に求めることは、楽な反面、自分の運命を他に委ねることになります。

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