小説の最初の2、3行目第5弾。ザ・ゴール2とデセプション・ポイント

今回の作品は「ザ・ゴール2」と「デセプション・ポイント」

小説の最初の2、3行目を読むことで、本物の作家のレトリックに学ぶシリーズ第5弾は、例によって家にあった本から、ザ・ゴール2デセプション・ポイントです。

ザ・ゴール2の最初の三行

ザ・ゴールがベストセラーになり、続編であるザ・ゴール2も邦訳で発売されました。原題はIt’s Not Luckで、ザ・ゴール2ではありませんが、話の内容もザ・ゴールの後の話で登場人物も主人公も被っているので、ザ・ゴール2というタイトルの方が確かに日本人にはわかりやすいと思います。

私はエリヤフ・ゴールドラットさんが書いたこのシリーズを全て読んでいますが、全て同じぐらいワクワクして読むことができました。こんなふうにビジネスに役に立つ話を面白い物語として読めるのは本当にありがたいです。2011年に亡くなってしまったので、もうこの種の小説を読めないと思うと残念です。弟子のような人たちが似たような本を出版しましたが、当然ですが本家の迫力やまとまりには遠く及ばず、ゴールドラットさんの話の焼きまわしの様な印象でした。一応最後まで読みましたが。

 

「さて、アレックス・ロゴ君のグループですが・・・・・・」ようやくグランビー会長の話が、私のグループのところにさしかかった。私は椅子の背にもたれ、会長の一言を味わっていた。それも無理はない。スピーチ原稿をすべて書いたのは、多角事業グループ担当副社長の私なのだ。正確に言えば、全部ではない。

前作のザ・ゴールとはうってかわって非常に穏やかな始まり方です。この後すぐに、緊急動議で多角事業グループは売却の危機に瀕しますが、その演出をより引き立たせるためにわざとこのような穏やかな始まり方にしているというのもあると思います。ザ・ゴールで問題はすべて解決。最強の武器、制約理論を手に入れて順風満帆はずです。ラスボスを倒した平和な世界のようなところからどんな物語が待ち受けているのか、前作を読んだ読者なら続きが気になると思います。

デセプション・ポイントの最初の三行

デセプション・ポイントはあまり知っている人はいないかもしれませんが、ダヴィンチ・コードと聞けば、すぐにわかる人も多いと思います。作者のダン・ブラウン氏はダヴィンチ・コードで有名になり、同系統の小説を多数執筆しています。デセプション・ポイントもその一つです。反物質というSFの世界のような話が現実とも架空の話ともわからないように描かれており、最初の「この小説で描かれる科学技術はすべて事実に基づいている」という言葉が、「これは本当にあった話なんだけどね」と前置きして怖い話が始まる時のようなゾクゾクした気持ちにさせてくれます。

 

 

索漠たるこの地において、死は数限りない形で訪れる。地質学者のチャールズ・プロフィーは苛酷なまでに広壮なこの土地で長年生き抜いてきたが、その身に降りかかろうとしている不当でむごい運命に対しては何の覚悟もできていなかった。

この上なくわかりやすい死亡フラグですが、最初に死に役の人がその人の視点で物語を始め、直後に死にながら、のっぴきならない状況であることを読者にわからせるという演出もたまに見かけます。十中八九死ぬことがわかっているけど、この人がどのような形で死ぬのか続きが非常に気になる最初の三行です。

 

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