5億年ボタン。酔歩する男。クトゥルフ神話の世界。【ネタバレ注意】

5億年ボタンという怖い話

5億年ボタンという怖い話があります。ボタンを押すと脳内で5億年が経過し、5億年経った後記憶を消されて100万円をもらえるというボタンです。

脳内で5億年経った感覚を味わっているだけなので、体には何の変化もなく、5億年経過中は眠くもならないし、お腹も空かない状態です。しかも5億年終わったら記憶を消されるので、端から見るとまるでボタンを押したらすぐ100万円をもらえているように見えます。

自分の中でも記憶がないので、本当に5億年経過したのか覚えていません。そこで、簡単に100万円がもらえると思い込み、連打してしまうみたいな話です。

実際には、5億年何もない空間に放置されたら間違いなく発狂すると思います。5億年どころか1週間もかからず発狂しそうです。脳内の出来事なので発狂もできないということなのかもしれません。

この話はかなり有名なので、知っている人も多いと思います。

酔歩する男

5億年ボタンが面白かったので、似たような話はないか調べていたら、掲示板のまとめサイトか何かで酔歩する男という話が怖いというのを見つけました。

酔歩する男は、日本のクトルゥフ神話作家の小林泰三先生が書いた短編集、「玩具修理者」に収められている一編です。この先はネタバレになります。物語をちゃんと読みたいという方は、やる夫AAのまとめがあるので、それを読んでもいいと思います。

私は、やる夫AAのまとめを読んで、原典の小説のほうをどうしても読みたくなり文庫本を買ってしまいました。面白かったです。

さて、ネタバレですが、この話を一言で表現すると、時の狭間を永遠に彷徨っている人間に主人公がバーで出会う話しです。このときの狭間を永遠に彷徨っている方法が非常に独創的で読んでいて感心してしまいました。

我々は、時間の流れを遡ったり未来に行ったりできません。ただ、時間が流れていて、今日の次は明日が来て、明日の次は明後日が来るというのは認識しています。自分が寝て起きたら当然に次の日になっているわけですが、もし、寝て起きた時、数年前の自分になっていたら、数年先の自分になっていたら。

それも、頭の中の意識だけが数年前や数年後に飛んでいて、その数年間、自分とは違う自分が何らかの行動を取っているわけです。そして、その意識が飛んだ先の体でとった行動で未来が変わってしまうとしたら。

時間を彷徨っている男は、寝るたびに時間軸上の色々な自分に飛んで、何の準備もなく突然講演をしなければならなくなったり、高校時代の自分の体に飛んだりします。

こうして、未来や過去に行ったり来たりして、そこで取る行動で未来が変わりというのを延々繰り返しており、主人公とは別の未来で親友だったことがあると語るのです。

この男は、死ぬことができません。例えば自殺するとその瞬間過去のいずれかの時間軸の自分の体に飛んでしまうためです。

主人公は、この男が主人公しか知らない秘密を言い当てたりするので本当の話だと信じるしかないのですが、検証しようがありません。物語の最後には気が狂ってしまいます。最後に気が狂うのはクトゥルフ神話ではお決まりの展開です。

体と意識を別個のものと捉え、意識のみが時間軸上を酔歩するという発想は非常に面白いと思いました。

 

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