主人公が記憶を失っているという設定。読者と主人公の同調

主人公が記憶を失った状態から始まる物語

昨日の記事で書いた返校もそうですが、物語の開始当初、主人公が記憶を失っているという設定は意外と多い気がします。

脱出ゲームであったり、ホラー要素があるミステリーだったりに多い設定ですが、気がつくと自分が見たことのない場所にいて、なぜここにいるのかわからない、ただし自分が何者なのかはわかっているという状態から、自分が何者なのかさえもわからなくなっているという完全記憶喪失状態まで、程度の差はありますが、とにかく自分が本来把握しているはずのことが把握できていないという状況から物語が始まります。

主人公の記憶がないのは読者と同じ状況にするため

物語が始まる時点では読者(ゲームであればプレイヤー)は前知識がありません。読者に状況を理解させるためには、物語に登場する人物に状況がわかるような会話をさせたり、状況を描写する事で徐々に現在どのような状況なのかというのがわかってきます。

この会話や描写を以下に自然にできるかというのが物語の巧拙を決める重要な要素になりますが、主人公の記憶をなくす事で、この読者に状況を説明することが簡単に自然に行うことができるようになります。

何しろ、主人公も状況がよくわかっていないのです。主人公が状況を把握するために人に質問したり、周りの情報を収集する描写を通して、読者も主人公が何者でどういう状況にあるのかを主人公と同じスピードで把握することができるようになります。

主人公の記憶がないことによる仕掛け

主人公に記憶がないことで、記憶が戻ることによって、状況を一変させるという仕掛けとしても使うことができます。

記憶がない間は善人だったのに、記憶が戻ったことによって悪人となる展開、もしくは悪人だったことを思い出し絶望する展開。記憶がなかったがために謎だったことが、記憶が戻る事で謎が解ける展開。記憶が戻ると同時に強力な力を手に入れる展開。記憶を自ら封じており、あるタイミングで記憶が戻るように自分で仕掛けていたという展開。

様々な展開がありますが、あることをきっかけに記憶が戻ったということで、自然に超展開を生み出すことができます。

そもそも記憶がなくなるほどのことが起こること自体が不自然

この手法は大変便利な手法ですが、やはり多用することは難しいというのが、「なぜ記憶がなくなったのか」の自然な理由付けが難しい点です。

そもそも人生で記憶を失う経験をしない人が大半だと思います(酒で記憶が飛ぶといった経験は別です)。記憶喪失になるには相当衝撃的なことが起こっている必要があり、何かしら「それはしかたない」と読者が思えるような理由が必要です。

それを考えること自体が難しく、普通は誰かに魔法を掛けられたとか、自分で魔法を掛けたとかよくわからない不思議な力に頼ることになると思います。

そうすると今度はありきたりになってしまい、なかなか難しいですが、有効な手法ではあると思います。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です