「お前さえいなければ!」が物語を面白くするトリックスターの役割

物語の憎まれ役。トリックスターが物語を面白くする

物語には、敵役とは別にトリックスターと言う役割を与えられているキャラクターが存在します。

トリックスターは、場面に応じて敵のような存在だったり、味方のような存在だったりと立ち位置が安定していません。このため、カードのワイルドカードやジョーカーにも例えられる存在です。

その重要な役割は、「お前さえいなければ平穏無事に済んだはずなのに!」という局面で、場面を引っ掻き回し、新しい展開に導くことです。

味方の思わぬ行動が、有利に進めていて普通に行けば勝てている場面で一気に劣勢に陥ったり、致命的な局面で裏切る事で主人公が窮地に陥ったり、受け手が「このまま行けば余裕だな」と若干退屈に感じる局面で急転直下の展開を生み出すためには欠かせない存在になります。

火を人に与えたトリックスター、プロメテウス

トリックスターの代表例として、ギリシャ神話のプロメテウスがいます。彼は神々の世界から火を盗んで人間の世界にもたらしたとされています。

これにより、人間は火を操ることができるようになり文明は急速に発達します。ギリシャ神話上では神々から見れば人間達が手におえなくなる原因を作った裏切り者ですが、人間から見れば発展に多大な貢献をしてくれた英雄です。

火の利用により、人間は穀物を主食として摂取できるようになり、肉類のように本来は人間(猿の仲間)の食べ物ではないものも、火を通すことで栄養源として摂取できるようになりました。

日本神話のトリックスター、スサノオ

国産みを行ったイザナギ、イザナミから生まれた三貴神の一人、スサノオもトリックスターとして有名です。時に怪物を退治する英雄となり、時にアマテラスを害する乱暴者となり、物語の中でいい存在であったり悪い存在であったりします。

このように、はるか昔の神話の頃からトリックスターの存在は一般的でしたが、本来人間と言うのは完璧な悪人、完璧な善人という存在は皆無で、自分の中にいい面と悪い面が共存しているのが普通です。

古来から物語の中でも、そのような人の二面性を表そうとする存在なのかもしれません。

 

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