標準原価計算とABC。把握できないプロセスの概念

標準原価計算と活動基準原価計算(ABC)

たまには専門の会計の話を。標準原価計算とは、かつて工場で人がラインに並んで働いていた様な頃に使われていた古典的な原価の計算方法です。

この方法は、材料の消費量や作業時間に比例して製品が出来上がっているうちは有効な手法でしたが、今のように機械化されほとんど機械がやってしまうようになった時代にはそぐわないものです。

機械化された工場では、働いている人は機械の管理をやっているだけで、働いている人が倍の時間働けば製品が倍できるというわけではありません。また、機会の維持費や、工場の経理を担当している事務員の人件費などのほうが全体の費用として大きくなりがちです。

これら、製品の生産に直接関係しない費用を製造間接費といいますが、この製造間接費を出来るだけ細かく分析して、正しい責任部門に負担してもらうように編み出されたのが、活動基準原価計算です。

標準原価計算では製造間接費はざっくりとした配賦基準で各製品に配賦されていましたが、製造間接費がほとんどになった現代でそのようにすると実態と乖離したものが出来上がります。

そこで製造間接費を一つ一つタイプ別に見ていき、機械の維持費はより機械を使う製品に負担してもらい、工場の事務員の人件費は全ての製品に均等に負担してもらうなど細かく分ける基準を設定すればより実態に近くなるのではと考えたのがABCになります。

いくら費用を正確に分配しても改善策は見つからない

実は、製造間接費をどこが負担するのが適当かをいくら細かく詰めて考えても、その製品をより低コストで、より短いリードタイムで作るにはどうすればいいかはわかりません。

この方法は、不採算製品の把握と撤退の意思決定のために使うことが出来るかもしれませんが、撤退した結果、製造間接費が減らなければ別の製品により多くの製造間接費が負担されるというだけで、更なる不採算(に見える)製品を生むという悪循環に陥ってしまいます。

そこで、工程のどこで製品が滞留し、何が障害となって製品の加工を滞らせているのかといった分析が必要になるわけですが、その点については標準原価計算もABCも関知できない部分です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です